中小企業には、中小企業の後継者育成がある!



大企業と中小企業では後継者育成の「核」が違う


後継者育成の失敗談にこんなものあります。

事例1

後継者育成のために、後継者に経営学を学べる学校へ通わせた。しかし、いざ事業を引き継いでみると学校で学んだことは殆ど使わなかった。結構な時間を費やしたのに残念だった。


事例2

後継者が学校で学んだことは理にかなっていることばかりだが、現実の経営では理になかっていることばかりを行ってはいられない。学校に通わせたところ後継者が理屈っぽくなってしまった。

後継者育成を行うときに学校や講座に通うのは一般的です。

しかし、上記の事例は案外起こりがちです。

その理由は、大企業の後継者と中小企業の後継者では学ぶべき「核」に違いがあるからです。




大企業は「多角的経営」

後継者は「あらゆる事業に当てはまる経営論」を学ぶ


大企業はある分野で成功を収めた後に、その知見・資産・知名度を活用して多角的な経営を行います。三菱や三井などの大企業は、卸売・不動産・銀行・貿易・自動車・家電・重工業など様々な分野で活躍しています。


トヨタは自動車に特化していますが、開発・販売・生産・輸出と事業領域を広く持っています。(実際は自動車事業以外にも、ロボット開発・金融・住宅・海洋など別分野も扱っています。)


仮に大企業の経営者となる場合、求められる能力はなんでしょうか?

それは「普遍的な経営理論=あらゆる事業に当てはまる経営論」です。


卸売・不動産・自動車・銀行・貿易……これらを全て経験することはできません。

市場の先行きを予測し、各事業の状態を数字や報告書から判断する能力が必要です。


また、従業員が1万人もいる場合、一般にいうコミュニケーション能力やリーダーシップでは大企業という大きな船を導けません。



中小企業は「特化型経営」

後継者は「自社の強みを生かした経営論」を学ぶ


一方、中小企業は一つの業種に特化していることが多く、それを特化型経営といいます。

商社なら商社。不動産なら不動産。他社と差別化を行いながら、専業化することで企業の強みとしています。


博多明太子を生み出した「株式会社ふくや」は創業当初は様々な生活雑貨を売っていましたが、明太子が認知を得てからは明太子に特化した事業体制をとっています。


では、中小企業の経営者となる場合、求められる能力はなんでしょうか?

それは「自社に特化した経営理論」です。


ポイントは「自社業界」ではなく「自社」であることです。

中小企業は他社のと差別化を行うことを得意としています。そして、その差別化こそが利益を生み出す源泉となっています。


差別化の内容は経営ノウハウであるかもしれませんし、技術かもしれませんし、アイディアかもしれません。社員とのコミュニケーションの取り方かもしれません。これは「自社業界」の知識をベースとした「自社」が独自に行っている経営理論なのです。




「自社の強みを生かした経営論」は学校では得られない

中小企業の後継者はまずはここから始める


もちろん普遍的な経営論を学ぶことに無駄はありません。むしろ積極的に取り入れるべきです。今は安定していても、いずれは市場が衰退するでしょう。変化を余儀無くされる時期がくるでしょう。そのときに他業種に移行することもあるかもしれません。普遍的な経営論は後継者に可能性を与えてくれます。


他方、中小企業には普遍的な経営論では得られないノウハウが凝縮されています。

それらは事業を引き継いですぐに活用することができます。ここがなによりの強さです。

普段の業務に忙しく、勉強に時間が裂けない後継者ならばここさえ押さえればいい、普遍的な経営論はその後に学んでいけば十分だと私は考えています。


中小企業の後継者は「自社に特化した経営理論」を受け継ぐことが「後継者育成の第一歩」であると覚えていただければ幸いです。